どんだけあたしが純情なのか知るがいい

ひたすらにひたすらに、迸る想いを綴るだけ

恋と愛の境界線はグレーだし、一途とストーカーの境界線だって実際は蟻の行列みたいなもんで突然発生したり切れたり伸びたりするんじゃないの?

絶賛恋愛中の職場の女友達、A子に関する話。

 

コロナのせいで以前のように右手にお酒、左手をA子に乗せて恋バナする機会(別名:泥酔する会)がなくなってしまい、ほぼ毎日メールやLINE等の活字で密ってる状況。

もともと職場外では活字でのコミュニケーションしかとっていなかったので、電話やビデオ通話という手段はとっていないし、これからも多分ない。

 

彼と雑談できない、姿を見られない、声や気配を味わうことができない…etc...

そんな苦しい胸の内を毎日聞いてる、もとい読んでいる。

 

最初の頃は受信したコメントに対して真剣に意見を述べたり、偉そうにアドバイスをしてた。

「そんなにつらいなら告白しちゃえば?はっきりさせた方が楽になれるよ」

「仕事に絡めてでもいいから会う時間を作ってもらえば?」

 

のらりくらりと『でもね…』とかわされて、最後に『彼が幸せになってくれれば、相手は私じゃなくても別にいいの』などと、マザーテレサみたいなセリフが出てきたときには衝動的にA子とのLINEをブロックしそうになった。

 

A子はただ話を聞いてほしいだけ。

心がキュウキュウ鳴いてしまってうるさいから、その声を自分で上手にコントロールすることができないから、誰かにそれを分散したいだけなのだ。

あたしにも人並みの感情はある。限界だってある。鬱なオーラが伝染してきてしまいそうで、あるいはプツンと切れて暴言を返してしまいそうで、一時期はbot的な自分の立ち位置が辛くなってスマホの着信音をオフにしてしまったくらいだ。

 

でも、ある日A子から、

『ネットストーカーみたくなってきてる』

というコメントが届き、あたしはあたしの気持ちを切り替えることにした。

A子の悲痛な心の叫びを嫌がらずに聞いてあげることにしよう。

否定したり考えを押し付けたりせず、そっと気持ちに寄り添ってあげよう。

そうすることにした。

 

じつはあたし自身がネットストーカー的な心理を抱きかけたことがあったからだ。

ずいぶんと前の話なんだけど、当時はストーカー規制法個人情報保護法なんてものはおろか、ネットのマナー自体も整備されていないような状況だった。

意中の人の名前をメジャーな検索エンジンに入力すれば、何かしらの情報を拾うことができたのだ。

これはね、本当に癖になる。今風に言えば「沼」だ。

何の努力もせず、簡単に自分にとっては貴重な情報が得られるんだもん。

 

その人は普段は寡黙なのにネット上ではとても饒舌だった。

律義な性分だったらしく些末なことも重要なことも同じ目線と分量で、毎晩丁寧な日記を公開していた。

1ヶ月くらいその日記を読みこんだら、大体その人の生活リズムが分かってしまった。

「きょうはあそこのコンビニで某週刊誌を買うために、いつもより少し朝早く家を出る日だ」

「こんやはまだ更新されてないなー。あ、そっか、飲み会って前に書いてあったからまだ帰宅してないんだー」

 

現実世界では大人数ならば飲みに行ったり会話したりはできたけど、二人だけで出かけられるほどの関係ではなかったし、なれるとも思えなかった。

全然タイプが違ったからね。例えばお酒。あたしはみんなで爆笑しながらビールとかをがぶがぶ飲みたい派だったんだけど、その人は落ち着いた静かな店でしっとり語りながらゆっくり高そうなお酒を味わいたい派だった。

 

でもこの日記の熱狂的なファンになってからは、その人の思考の形跡を追いかけることができるので、その人があたしの体の一部になったみたいな距離感をいだくようになってた。パッと目にした世界で、最初にその人がどこにある何に興味を示すか、そんなことまで瞬時に想像できるようになっていた。

 

同時に、家でひとりでその人の日記を読んでいると、その人がモニター越しにあたしだけに語りかけてくれているような、愛のセリフだけが書かれていない長い長いラブレターを届けてくれているような、そんな感覚にもなっていた。

 

そしてそれで満足していたし、むしろその方がちょうどいいかも、とさえ思っていた。自分の気持ちを知られなければ拒絶されることはないから。

拒まれてしまったら、もうこれまでのような関係ではいられなくなってしまうかもしれないから。

 

ある時から、日記の気配が変わった。

丁寧な描写がだんだん雑になってきて、更新されない日が続いたりもした。

言葉が浮ついている日もあれば、要点をぼかし過ぎて何が言いたいのか意味をくみ取れない内容の日もあった。

 

まさか・・・。

 

現実世界で、彼女ができたことを知らされた。

 

泣きましたよ。死ぬほど泣きました。

その夜は、ひとり家でそれでもモニタの前で日記を読みながら大泣き。

誰かに話を聞いてもらいたかったけど、誰にも恋心を打ち明けていなかったし、第一こっそり名前検索して日記を探し出して、こっそり悦に入っていたなんて恥ずかしくて言えない。勝手に恋して、勝手に失恋して、しかもその後にまだ日記を読んでるなんて言えやしない。

 

公開されているものを純粋に読むだけでは「ネットストーカー」とは言わないらしい。

それに対して不快なコメントや操作、攻撃等のリアクションを起こすことをそう呼ぶらしい。

 

A子もたぶんあたしと同じで、現実世界で勇気を出せないから検索しまくっているだけで、本当の意味でのネットストーカーになることはないだろう。

 

でも、あの不毛な時間の先輩としてはA子にそんな惨めな思いをしてほしくない。

どんなに検索しまくって情報を得て、仮にそれが本人によって書かれた内容だったとしても、今この瞬間の彼の心情ではないし、真実ではないかもしれない。

彼がA子を認識したうえで放つ言葉、A子が受け止めるべき言葉はそれだけなのだ。

 

きっとA子はネットストーカーまがいのウォッチ行為を当分やめられないだろう。

そんなに簡単に沼からは抜け出せない。

あたしのようにショックをうけたり、別に好きな人が見つかったり、何かきっかけが無いと難しいと思う。

でもせめて、A子が傷つくことがあったときに話せる人がいたらすこしは痛みが軽減されるんじゃないかな。

 

小学生の頃は大人になったらみんなスマートな恋愛を楽しむんだって思ってた。

でもそんなことは全くなくて、いくつになっても藻掻いて苦しんでカッコ悪い。

大人は隠すのが上手な生き物なだけなんだ。

 

 

 

 

 

っていう妄想をした木曜日でした。(え?)

 

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テヘペロ

 

嘘です。

「寄り添う」という言葉の意味が深すぎて泣ける。

コミュニケーションに必要な共感力が問われるらしく、エッセイなどを読むと鍛えられるという記事を目にしました。

 

おすすめエッセイがあったら教えてください~。